本文へ移動

大化け株を扱った唯一の統計研究:5〜10倍株を探す条件(ヤルツェワの2009〜2024年研究)――正直、驚きました

ほがらかなマクラ

数か月前の投稿の再掲です。

実は、株価が5倍、10倍、さらには100倍になる「マルチバガー」について、統計的にしっかりした研究があります。ここ数日、アンナ・ヤルツェワの論文『The Alchemy of Multibagger Stocks』を読み込んでいました。2009〜2024年に、数年にわたって大きなリターンを上げたNYSE・NASDAQ上場の464銘柄を調べたものです。パネル回帰モデルを使った数少ない研究の一つなので、実際のデータに基づいています。とても参考になったので、内容を整理します。

1.大化けを予測できなかったもの

多くの人が重要だと思っている要素の中にも、そうではなかったものがありました。

・1年間または5年間の利益成長。EPS、EBIT、EBITDA、純利益、売上総利益の成長には、予測力が見られませんでした。 ・特定の業種に絞ること。大化け銘柄はIT、資本財・サービス、消費関連、ヘルスケアなどに広がり、公益企業も少数含まれていました。 ・配当、自社株買い、アナリストのカバー状況、研究開発への支出割合、アルトマンのZスコア、負債比率。いずれも、将来の市場超過リターンと一貫した統計的な関係はありませんでした。

つまり、「急成長企業」「まだ注目されていない銘柄」「ハイテク企業だけ」といった条件で絞ると、実際に大化けした銘柄をかなり取りこぼしていたことになります。

2.圧倒的に強かった指標はFCF/株価

特に目を引いた結果です。

・フリーキャッシュフローの株価に対する比率、FCF/Pは、回帰分析で最も大きな係数を示しました。 ・B/M、つまり1株当たり簿価を1株の市場価格で割った簿価時価比率を加えると、それがないモデルよりも、どの銘柄が長期的な勝ち組になるかをうまく説明できました。 ・この二つがそろって改善した場合、年間リターンへの影響は大きいものでした。

要するに、フリーキャッシュフローに対して割安なところから始まることが、ほぼ何よりも重要だったのです。

ただし注意点もあります。自己資本がマイナスの企業は、どの時価総額の区分でも大きく出遅れていました。

3.規模では小型企業が優勢

大化け銘柄の「出発点」の中央値は、次のとおりでした。

・時価総額:3億4800万ドル ・売上高:7億200万ドル

小型株は中型株や大型株を大きく上回りました。規模の効果は、この研究で特にはっきりしていた傾向の一つです。

4.収益性はそこそこでも、改善していること

典型的な勝ち組は、最初から抜群の収益性を持っていたわけではありません。

・ROE:約9% ・EBITマージン:約3.9% ・ROC:約6.5% ・売上総利益率:約35%

大事なのは傾向でした。勝ち組は、時間とともにこれらの指標が改善する傾向にありました。利益成長は後からついてきましたが、最初の段階で頼れる予測指標ではありませんでした。

5.売上成長は悪くなくても、決め手ではない

長期的な売上成長率の中央値は約11%でした。ただ、これも将来の大化け銘柄をほかから分ける変数ではありませんでした。

原動力は急速な売上成長ではなく、キャッシュの創出、つまりプラスのFCFに、評価倍率の上昇と利益率の改善が組み合わさることでした。

6.再投資の質

興味深い結果として、資産の成長率がEBITDAの成長率を上回ると、その後のリターンは目立って低下していました。

それに見合う利益の伸びがないまま積極的にバランスシートを膨らませた企業は、期待外れになりがちでした。

なぜでしょうか。通常は、次の三つのどれかを意味するからです。

a.大きく支出しているのに、それほど成果が出ていない b.新規投資から十分なリターンを得られていない c.経営陣が事業の採算の悪さを隠すために規模を追っている

7.買うタイミングと株価の動き

実践的な点もあります。

・購入時に過去12か月の安値付近だった株のほうが、結果は良好でした! 上昇は底から始まっていたのです。 ・1か月のモメンタムはわずかにプラスでした。前月に上昇した株は、その勢いが少し続く傾向があったということです。 ・3〜6か月のモメンタムはマイナス、つまり平均回帰でした。中期では、直近の好調さがむしろ警戒材料になっていました。 ・多くの勝ち組の値動きは激しく、一直線ではありませんでした。大化け銘柄は、その渦中ではほとんど大化け銘柄らしく見えないのです。

道のりは決して滑らかではありません。ファンダメンタルズが崩れていないなら、保有し続けましょう。

8.マクロ環境

金利上昇は、大化け候補の翌年のリターンをおよそ8〜12%押し下げていました。

小さな企業ほど金利の影響を受けやすいので、筋は通っています。割引率が上がれば評価額が下がり、環境も厳しくなります。つまり、金利低下を予想するなら、投資にはよりよいタイミングだということです。

研究結果をもとにした簡単なスクリーニング

モデルで目立った要素だけに基づいて候補リストを作るなら、こんな条件になります。

・FCF/Pが高いこと。FCF利回り5%以上 ・B/Mが0.40を超え、営業利益がプラス ・時価総額20億ドル未満 ・収益性が改善し、利益率や資本利益率が上向いている ・資産成長率がEBITDA成長率以下 ・過去12か月の安値付近で取引されている ・自己資本がマイナスではない

要約

ヤルツェワの研究を一言でまとめると、大化け銘柄は小さな企業から始まり、フリーキャッシュフローに対して割安で、採算が改善し、うまく再投資している。そして、通常は熱狂の中ではなく、退屈な時期に買われるということです。

意外だと思った指標はありましたか? 銘柄を調べるときに、こうした条件で絞り込んでいますか?

コメントを読み込んでいます…