銘柄選びで一番役立ったのは、検索ツールより業種ごとの違いを知ることでした
要するに、個別の株を評価する前に、その会社が属する業種を理解したほうがいい、という話です。業種が違えば、商売の仕組みも、普通とされる数値も、景気の影響の受け方も違います。そこを無視して比べると、机上では正しそうなのに、実際には損をする判断になってしまいます。
米国の個別株に投資し始めて7年ほどになります。当たり前だと思う人もいるでしょうが、もっと早く誰かに教えてほしかったので書きます。背景を考えず、違う業種の割安さを同じ指標だけで比べても、意味がないんですよね。
最初の数年は、銘柄検索ツールでPERの低い順に並べて、「安い株」を探していました。PER10倍の銀行と35倍のネット経由でソフトを提供する会社があったら、銀行のほうがお買い得だと思うじゃないですか。
でも、そうとは限りません。貸倒れが増える局面に入りそうで、融資先も危なっかしい銀行なら、10倍でも高いかもしれません。一方、売上が毎年40%増え、粗利益率が80%あって、顧客が乗り換えるには業務の仕組みを丸ごと作り直さないといけないソフト会社なら、35倍でも安いかもしれません。全く違う商売を同じ物差しで測って、思うようにいかず首をかしげていたんです。物差しのほうが問題だと気づくまで、認めたくないくらい時間がかかりました。
役に立ったのは、数字を見る前に「この会社はどの業種で、その業種では何を確認すべきなのか」と考えることでした。
・ITなら、ほかのサービスの土台になる仕組みなのか、単なる一機能なのか。顧客が乗り換える負担はどれくらいか。事業が大きくなると利益率はどう変わるか。 ・医療関連なら、特許切れで売上がどれほど影響を受けるか。承認を待っている製品は何か。今後の材料は、成功か失敗かで結果が大きく分かれるものなのか。 ・金融なら、利ざやはどちらへ向かっているか。失業率が2ポイント上がったら融資先はどうなるか。経営陣は自社株買いをしているのか、事業を伸ばしているのか、それとも現金をため込んでいるのか。
市場全体ではなく、その業種の基準で会社を見るようになって、調査の焦点がぐっと定まるようになりました。比べる相手を正しく選んで、初めて「安い」に意味が出てきたんです。
知識が積み重なるのも大きいです。同じ業種を5〜6社しっかり調べると、7社目は半分の時間で済みます。業界の動きも、よく使う指標も、もう分かっています。その業界の事情を踏まえて、経営陣の言葉が口先だけなのか、本当に自信があるのかも、聞き分けられるようになります。
昔の私もそうでしたが、個人投資家は銀行、製薬、半導体、小売りと、思いつくままに調べる業種を変えがちです。それでは、どの分野でも知識が積み上がりません。自分で自分を不利にしているようなものです。
始めたばかりなら、本業に一番近い業種から入るのがいいと思います。ほかの投資家にはない背景知識が、すでにありますよね。それを仕事だけで完結させず、株の分析にも向ければいいんです。
同じ経験をした人はいますか? あちこち手を出すより、1〜2業種に絞って詳しくなったほうが、成績はよくなりましたか?