給与交渉より前に、提示額が決まる場面があるのを知っていますか?
「先に希望額を言わないように」というアドバイスはよくあります。それもいいのですが、もっと大事なのは、金額がいつ決まるかを知っておくことです。思っているより早く、たいていは給与交渉の場より前に決まっています。
ある程度仕組みが整った会社では、ざっくりこう進みます。求人を出す前に、そのポジションの給与帯が決まります。たとえば年収850万〜1100万円。それは報酬を担当する部署や計算表で決められていて、採用する部署の責任者が自由に動かせるものではありません。ただ、その範囲のどこにあなたを置くかは、その責任者が決められます。それも内定を出すときではなく、2〜3回話したあとに決めることが多いです。人事から金額を伝える電話が来るころには、何日も前に誰かがその額を書き、承認を取っています。電話の相手は、再度申請する手間や時間がかかるので、あまり動かせないこともあります。
つまり、条件をよくするために働きかける時期は、よく言われるより前にあります。重要なのは、採用責任者が「十分に採用できる人」と見るか、「ぜひこの人に来てほしい」と見るかを決める場面です。その違いで、給与帯の中の位置が変わります。決まるのは交渉の場より、面接の中なんです。
そこから考えると、実際にできることがいくつかあります。
最初の面談で採用担当者が希望額を聞くのは、交渉というより、すでにある給与帯に収まるかの確認です。低すぎれば初めから低い位置に置かれて、あとから上げにくくなります。高すぎれば、適性を見る前に予算で落とされます。そこでの目標は交渉に勝つことではなく、想定の範囲内にいながら、その範囲を知ることです。「お互いに時間をかける前に、金額の認識が合っているか確認したいのですが、このポジションの給与帯を教えていただけますか?」は普通の質問です。最近は答えてくれる採用担当者も多いですし、給与条件の明示が求められる募集では、なおさらです。
ほかの会社からも声がかかっているなど、競合する話があるなら、内定条件を出される前に伝えるほうがいいです。出たあとだと、脅しのように受け取られ、再承認も必要になります。その前なら、採用責任者が提示額を決めるための情報なので、社内でも話を進めやすくなります。
実際に条件が出て、もっと上げてほしいときは、関係を築けているなら、採用担当者ではなく採用する部署の責任者に相談します。採用担当者は金額を伝える人です。別の金額を勝ち取るために社内で動けるのは責任者のほうで、それをしてくれるのは、すでに欲しいと思っている相手に対してです。
金額が動かないなら、ほかの条件に余地がないか聞いてみましょう。入社日、入社時の一時金、次の給与見直しの時期、役職名などです。特に役職名は大事で、次の転職でも前の役職が給与帯を決める材料の一つになります。一度きりのボーナスとは違って、その先にも効いてきます。
創業者がその場ですべて決める小さな会社より、人事機能のある会社に当てはまりやすい話です。会社によってかなり違うので、報酬を決める側にいた方がいれば、違うところも教えてほしいです。